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2006年11月26日

No.6 ファミコン『桃太郎伝説』レビュー 〜思い出の秘話1〜


ファミコンを始めて購入した時に感じたワクワクドキドキは
あれから10年以上がたったというのに、その時以来経験していない。
プレステしかり、スーファミしかりだ。
そんな私のファミコン初購入は、小学1年生の時だった……。

クリスマスシーズン真っ盛りな、冬のとある1日。
奇しくも私の誕生日がクリスマスとわりと近い事もあってか
今年の誕生日には誕生日とクリスマスプレゼントをあわせて
欲しかったゲームを買ってもらえることとなった。
これまでの誕生日プレゼントといえば、戦隊ヒーロー物のロボットや、変身セットなど
いわゆる玩具と呼ばれる物を買ってきてもらっていたのだが
先のA君事件を機にテレビゲームにドップリとはまってしまった私は
親にゲームをおねだりしていたのだ。
このおねだり攻撃は既に夏ぐらいから始っていたのだが、全てスルーされていたのだ。
いつもおねだりしても

「ダメよ!」

と言っていたうちの両親。
……だが、たまたま私が夜寝付けなくて憂さ晴らしにトイレに行った時に

「あいつももう小学生になったから、ゲームでも買ってやるか」

と言うヒソヒソ話を親がいる部屋から聞いてしまったのだ。
うれしくて飛び跳ねたくなりそうだった私であったが
そこはぐぐっとこらえて、なに知らぬ顔で自室へと戻った。
翌日、昨日のことを親に聞いてみると

「聞いてたの?でも、勉強もちゃんとしないと買ってあげないからね」

との返事が返ってきた。
私は、うんうんと、頷くが、すでに頭の中はファミコンのことでいっぱい。
買う事を既に前提として欲しいゲームのことだけを考えていた。

そして、誕生日の日。
ファミコンを買うために夕方新宿へと向かう。
電車に乗っている最中も、胸がはちきれんばかりにドキドキしていた。

しかし新宿へと着いたはいいがこの時期はクリスマス商戦である。
その為あちらこちらに人がいて身動きすらままならない。
でも、ファミコンの為ならナニクソ!と言う気持ちが働いていた為か
不思議と苦ではなかった。

そして、念願のゲームショップへと着く。
この頃のゲームショップは、今とは売り方が少し違っていて
(全部が全部そうじゃないけど、新宿では多くの店がそうだった)
店の外にゲームが入っているショウウィンドウがあって、
そこから選んで購入するのである。
ショウウィンドウの反対側には店員がいて
気に入ったゲームがあったら取ってくれると言う寸法。
露店と言えば分かりやすいと思う。
ただ、ゲームが置いてある場所もレジも同じところだったので
購入するのも一苦労。
購入時にレジに並ぶ訳じゃないから、周りは順番なんて無視。
戦後の闇市みたいな状態である。
特にクリスマス商戦中は最悪で
買うどころかショウウィンドウに入っているゲームを見る事すらもできない。
今思うと極めて効率が悪い。
だから、無くなったんでしょうかね?

それでもなんとか人の間をぬって行き
欲しかった『スーパーマリオブラザーズ』を探す為に、ショーウィンドウを見る。

だけど、スーパーマリオブラザーズが見つけられない。
そこで、店員さんに聞いてみると品切れとの事。
母親は、また今度にしようと言って、今日の話を無かったことにしようとしていたが
私はスーパーマリオブラザーズじゃなくていいから、他のを買ってとせがんだ。
(余談だが、他の店でもスーパーマリオブラザーズを探したのだが無かったのだ)

「じゃぁ、何でもいいから早くしなさいよ」

と、母親が言う。

父親は父親で、私と同じようにショーウィンドウを見ていた。
物珍しいのか、結構楽しんで見ていたのを覚えている。
私も、早く買うソフトを選ぶ為に色々と見てまわる。
そして、その中に、面白そうなソフトを発見したのだ。

「桃太郎だ!これ欲しい!桃太郎!!」

『桃太郎伝説』
今ではすっかり御馴染み桃太郎シリーズの、一番最初に出たソフトである。
もちろん、電鉄のほうではない。
また、私が買った時にはアニメもやっていたので
その影響からこのソフトが欲しいと言ったのだろうが
アニメもそんなに見ていたっけかなと今思う次第である。

親は店員さんに、

「これ、子供でもできますか?」

と聞く。

まぁ、買ってゲームができなかったら無駄に終わってしまうので
親としても慎重になっていたのであろう。

そして、

「あっ、大丈夫ですよ!」

との店員さんの返答に、ようやくゲームが買えた訳である。

「ありがとうございました!」

購入したファミコンとソフトを手にし
この世界の覇者にでもなったかのような高揚が私の体を駆け巡っていた。

――ああ、早く帰ってやりたいな!

子供なら誰しもそうだと思うが
自分の用事が済んだ以上は、長居なんてしてられないのである。
とっとと帰ろう、と言う言葉が、私の口からでても不思議ではなかった。

しかし、親もわざわざ新宿まで来たとあってか
そう簡単にはお家へ帰らせてはくれないのであった。
この後私は、散々新宿の街を歩かされることになったのである。


家に着くと、家族が誕生日を祝ってくれた。
寿司を食い、肉を食い、ケーキを食い、今日の誕生日をみんなで祝う。
食事を終え、いよいよ買ってきたゲームをプレイすることになるのであるが
まずは、ファミコンをテレビに繋ぐ作業をしなければならない。
もちろん当時の私には、そんなことはできなかったので
父親にやってもらうこととなった。
買ってきてすぐにプレイできると思っていたのに
世の中そううまくはいかないらしい。
父親も機械関係は苦手なのか、悪戦苦闘をしている。
そこで私は、この暇な時間を使って電話をかけることとした。

ピポパポピ。

「もしもしH君?ファミコン買ったよ!うん。それじゃ」

当時はファミコンを購入するとヒーローになれた。
そんなわけだからこそ
購入した事を友達に知らせる必要があったわけである。
いわゆる自慢である。
友達に電話をし終わった(一方的に)私は
父親がゲームの接続を完了した事を知ると、早速プレイを開始するのである。

――さぁ、どんなゲームかな?

私は期待とワクワクで興奮状態となる。
マリオのような楽しいゲーム風景を思い描きながら
電源をオンにするとスタート画面が表示される。
桃太郎を中心に猿やら犬やらが画面に映し出されると
すかさずスタートボタンを押しプレイを始めるのであった。

00008.gif

すると、桃太郎のストーリーがAVG形式で流れ始めた。
いわゆる、桃太郎の冒頭の部分だ。

00009.gif

私は、その文章を楽しみながら読む。
心では早く操作がしたくてたまらなかったが、
まずはその文章もじっくりと味わう事にする。
そしてストーリーが終わると、画面はRPGのマップに変わり
ようやく動かす事ができるのであった。
少しの間、その辺をうろうろするのだが
ここにきて私の当初の予想とは少し違うことに気付く。
いや、少し違うどころの騒ぎではない。
全く以て理解不能な状況に陥ってしまったのだ。

――何これ?

まず心で思ったことはそれであった。
実を言うと、この時まで私はゲームと言ったら
アクションゲームしか知らなかったので
一向に飛んだりはねたりするシーンにならないことに
少し戸惑いを覚えたのだ。
無論、RPGだからそんなシーンはない。
外を歩いていると、敵が現れて戦闘シーンになったりするのだが
当時の私には意味が分からず即効で死亡。
村とかに入ってみるも、何をどうしていいかも分からず
ただずっとうろちょろとしているだけだった。

その時になって、

このゲームはマリオとは違う!

と言う風に気付いたのだ。

プレイ開始から既に1時間。
なにも進展がないままでいると、親がゲームはもう止めてお風呂に入りなさいと言う。
普通ならばここで、もうちょっとだけやらせて!とか言うのが普通だと思うのだが
私は素直に親の言う通りにした。
それは、はっきり言ってあまり楽しくなかったからである。
親も、あまりに私が素直でいたことに疑問を感じたのか、ファミコン面白いか?
と聞いてきたのである。

私は子供ながらに、

「うん。面白いよ」

と、せっかく買ってくれた親に悪いと思いそのように言った。
(気を使う子供だったんだね私って……)
それに対し親は、

「そうか、よかったな。でも、ゲームばかりするんじゃないぞ」

と言って、笑顔で答えてくれた。

楽しみにしていたファミコンが手に入ったと言うのにもかかわらず
お風呂に入っている間中、私の気持ちは晴れないでいた。

そしてお風呂から出て、もう一度プレイする。
さっきの事が何かの間違いであったと思いたかったからである。
(ちなみにパスワードの事も知らないので最初からである)

しかし、画面に出てきたのは、さっきと同じシーン。
ますますどん底に陥っていく私であった。

だが、そうは言っても初めてのファミコンだったからか
村を歩き回っているだけでも、充分な気持ちになれていたから人間は不思議だ。

――これは、面白いゲームなんだ。

……と、自分に言い聞かせて。

この後も、このゲームをたまにやっては、同じことの繰り返しになるのだが
一向にRPGの仕組みが理解できない私は、いつしかこのゲームをやらなくなった。
それは買ってから1ヶ月もたっていなかったと思う。
あの頃はそんなにも気にはしていなかったのだが、
今思うとこれって凄い切ない感じがする。
親が私のために買ってくれたソフトを即効で飽きてしまった事や
それまでの情熱なども無になった事も含めて。
でも、人に気を使いすぎる性格だったからか
このゲームの事を聞かれても、つまらないとは一言も言わなかった。
向こうもプレゼントして良かったと言って笑顔で答えてくるのだから尚更。
それがまた当時の事を思い出すと、何か切ない感じになってくる原因とも思える。

だが、1つだけフォローするならば、これはあくまで買った当初の話。
RPGについて知識もなかった頃の話である。
すなわち約3年の後、再びこのゲームをやった時には
初めてこのゲームの面白さに気づかされることになるのである。

しかし、そこまでの間には
まだまだこのゲームに関する闇エピソードが存在するのであった。

続く。


『桃太郎伝説』初期プレイ時、評価:☆
発売・ハドソン
ジャンル・ロールプレイング
発売日・1987年10月26日
定価・5,800


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posted by 二条ジョウ at 03:09 | Comment(4) | TrackBack(0) | ファミコン レビュー | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も、子供のときはアクションばっかりで、ドラクエを見たときにショックを受けました。(笑
Posted by フランク at 2006年11月26日 23:21
コメントありがとうです。
やっぱり、初めての時は驚愕ものですよね。
いい意味でも、悪い意味でも。
Posted by 二条ジョウ at 2006年11月27日 03:57
当事ダンジョンのBGMが怖くて一人で出来ませんでした。
Posted by 凛とした紳士 at 2015年03月25日 16:49
>凛とした紳士さん

ダンジョンのBGMが思い出せなかったのでアレですが、私にも子供の頃はBGMの雰囲気でひとりできなかったゲームとかありました。
Posted by 二条ジョウ at 2015年03月26日 22:39
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